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喫茶 つぐみの部屋 #11by.秋光 亜実

2020.05.05

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喫茶 つぐみの部屋10

毎週月曜に通知が届く星占いが気にならなくなった。

お茶を沸かす回数が増えた。

日に日に靴下を履かなくなった。

23時に寝ても2時に寝ても、
8時に起きるようになった。

9時から16時くらいまでは
ラジオを聴かずにはいられなくなった。

街に触れる機会が減った分、
文字に触れる機会を増やした。

着る服は長袖から半袖になった。

2ヶ月前とこの1ヶ月間で変化したことをピックアップし始めるとぽろぽろと出てくる。世の中の様子に今までにない違和感を覚えはじめていた3月末のことが、だんだん日常になってきている。

こんなに長く続くなら毎日日記でもつけていればよかったナァと後悔の念を頭の片隅で抱きつつもそれをしなかったからと言って、適当に生きた日は1日もないと思える自分もいるので何となく胸の奥に生まれたモヤモヤを素手で取り出してベッドの上にポイと投げる。

よしもとばななさんの「ばななブレイク」を読んだ。

「つぐみちゃん、よしもとばなな好きなんバレてるで」
3ヶ月前、下北沢のライブハウスで久しぶりに会ったSuedaller Yankeeのだいちさんが、そう言いながら薦めてくれた本。だいちさんは大阪から遠征に来てたらしく、既に酔っぱらっている様子でばななさんの話と同時に「タランティーノは上品やねん…」と唸っていた。関連性はわからないけど、このエピソードは私にとってはセットになっている。

だいちさんに言い当てられた通り、私はよしもとばななさんの小説が好きで、何年かかけてコンプリートしつつあるんだけれども

(この部屋でも過去に数作、紹介させて頂いています。)喫茶 つぐみの部屋 #3 | SALON

どんどん新作が出るので追いつけないままでいる。でも、読んでも読んでも次がある、という感覚がうれしいので気が向いたら書店で手に取るというマイペースなスタンスだ。

「ばななブレイク」は、ばななさんに影響を与えた、ばななさんが好きな人々を自ら紹介するエッセイ集。畑正憲(ムツゴロウ)、カート・コバーン、岡崎京子、藤子・F・不二雄、小沢健二など多方面で活躍する人々・故人に加えて、周囲の友人、そして自身の父親。あらゆる方向に目を向け、深く興味を抱き、彼らへの想いを柔らかい手で大切になでるように言葉にしている、とても心あたたまる一冊だ。

人との距離を保つことを喚起され、誰にも会わない日々(しかも終わりが見えない)が続いている今のこのタイミングも相まって、私の好きな人々のこともああだなあ、こうだなあと、記してみたくなった。それにどんな意味があるとか、何になるとか、結果を求めるものではなく、そうやって自分に何か影響を与えてくれた人について想う時間や書き起す行為が思い出とともに私をまた元気にしてくれるし、次会ったときにどんな時間にできるだろうかと想像している時間が楽しいと思う。

日記みたいにやり場のない言葉を毎日書かないと(私解釈です)と思うと腰が重いけれど、伝えたいという気持ちが原動力になるとできそうな気がしてくる。(ここでは断言せずに、記すことができたその日に本人に直接伝えにゆきます・・・)

そして「原動力」という言葉を使ったけれども、これのすべては私にとってはやっぱり「伝えたい」ということなのだなと気づく。

その対象は、不特定多数を意識したものというよりは、目の前にいるあなた。あそこに住んでいるあの子。いつか共に過ごしたあの人。いつもたった一人なのだと思う。写真を撮るときも、絵を描くときも、文章を書くときも、つぶやきも。

こんなにも不意に、過去と未来が変わってしまうことを確信できる時代の分岐点を感じることは前代未聞で、大変。でもせめてこの時間に育まれているものに、丁寧に目を向けていたい。そう思うきっかけとなる1冊だった。

他にも本を読んだり、映画を観たり、ラジオを聴いたりして、多数の情報に触れている、というかどっぷり浸かっている状態だ。転じて、絵を描く、デザインをするなどアウトプットする機会も与えてもらっていることは幸運だ。

世の中がこんなことになって、やっぱり私にはこれしかないし、これに救われつづけて生きていくのだな、と思いがけなく確信させられる日々だ。

守らなくてはならない。

喫茶 つぐみの部屋10

2020.5.5

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隣の畑にすごい発見が落ちてるかも。
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