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BLACK BOX 02 | 家に帰ったら母親がお坊さんとSkypeをしていた日by.So Ohashi

2020.09.12

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“BLACK BOX” − セルフ・インタビューの形式でお届けする、27歳の一般人男によるインターネット自伝。

 

 

 

 

 

 

 

ー「家庭内夜逃げ」事件の後はどんな感じで暮らしていたの?

 

家族で住んでいた場所からそう遠くないところで賃貸マンションを借りて母、姉と3人で新しい暮らしを始めました。姉はまだ大学生だったと思います。僕も大学に入ったばかりの時期でしたね。

 

 

ー生活の変化は?

 

一連の事件でお金がなかったので、当然生活レベルは少し落ちましたが、不自由なく暮らせるレベルの部屋を借りられたので有り難かったです。
気持ち的に借りぐらしの気分が強く、バイトをしていたので早くお金貯めて家を出て一人暮らしできるように頑張ろうと思いつつ、久しぶりに戻った平穏な日々の居心地は悪くなくてしばらくはそこで暮らしていました。

 

 

ーその家で印象に残っていることは?

 

ある日バイトを終えて家に帰宅したら、母親が自室でPCに向かっていたんです。画面を見て何か喋ってるな、友人とビデオ通話でもしてるのかな?ぐらいに思っていたら、聞こえてくる言葉が聞き取れなくて。近づいて画面をチラッと見たら、オレンジ色の袈裟を巻いた肌の黒いお坊さんがサンスクリット語でこちらに語りかけていたんです。理解が追いつかない中、離婚の精神的ショックから変な宗教にハマるとかよくある話だなと思って、母親に「それ何?大丈夫なん?」と思わず聞いてしまった。

 

 

ー真相は何だったの?

 

母親の仕事はフィットネスでヨガを教えることでした。深く知らないので生半可なことは言えないんですが、ヨガについてバックグランドとなる思想の面から真に理解するために、母は(正直誰かよく分からないけど)えらい人の講習を受けていたそうです。そのスピードは早く、気づいたらリビングにはガネーシャ(インドの神様)が祀られたインド式仏壇のコーナーが誕生していました。母の食事はだいぶ前から玄米と納豆とキムチ、みたいなヘルシー志向でしたが、この時期には完全にベジタリアンへと移行したため、息子は肉を食い、母は玄米や豆を食べるという謎の食卓が始まりました。

 

 

ーどう思った?

 

母親が全力で打ち込めるものを見つけたことが分かって嬉しかったです。思想や指針が人の人生を変えるなって思いました。その頃は僕ら家族全員、未来が手探りだったと思うし、大人になってからそういった「崩壊」を体験してまたリスタートするのは相当、辛い道であろうと想像していました。本当の幸せは心の中にあるもので、体を委ねられる大きな川の流れのようなものを見つけたのだなと間近で見ていて感じ、何も文句はなかったしむしろ安心しました。

 

 

 

 

 

 

ーそれからのお母さんのストーリーは?

 

あれからもう10年近く経とうとしているのかな、ますます深みへと歩みを進めているようです。何度もインドと日本を行き来し、向こうの偉い人にかなり信頼されているようで。よくインドの偉い方が来日され、日本のそういった信仰を持つ方のため全国ツアーで講習会のようなものが開かれているようなのですが、すぐうちの母親が呼ばれて側近のようにツアーに同行して通訳や食事の世話を任されています。インドの偉い人は日本に来るとよく寺院を建てたがるらしく、「今度〇〇に寺がニューオープンするんだけど、住み込みで働かない?」みたいなオファーを受けたりしています。

 

 

ー日本で普通に暮らしている人からしたらギャップがすごいね。

 

本当ですよ。母は結構な頻度でインドに長期滞在していたし、姉も日本で結婚した後すぐに旦那さんの転勤でイギリスに移住したので、日本に暮らしているのが自分だけの時期がありました。ある日母親が突然、家族のLINEグループを作ったらしく招待が届いたのですが、グループ名を見て驚愕しました。

 

 

 

 

 

「いや誰が+1や!」と叫んでスマホを投げ捨てました。

 

 

 

ー最近はお母さんに会っている?

 

あの頃は大阪で一緒に住んでいたのですが、今たまたま、僕も母も東京に住んでいます。別々に。この前、用事があって初めて母の暮らす家にお邪魔したら、相変わらず壁にガネーシャがギンギンに貼ってありました。「ご飯食べてく?」と言われ出てきたご飯が、ソイミート。絶対に肉は出てきません。「おふくろの味」がだれしも食べたくなるのに、未体験ゾーンの食いもんがいつも出てくる。チャパティとか、豆のすりつぶしたやつとか、酸っぱい芋とか。あの頃の当たり前はもうないけれど、人生生きてればいつも始まり続けるからな、俺だって変わり続けるんだ、といつも感じるのです。

 

 

 

 

 

(Interviewer & Interviewee: So Ohashi)

 

 

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