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泳ぎを覚えたのは #09 「寂しい」という言葉を知らなかった君へby.サユリ ニシヤマ

2021.03.25

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「寂しい」という言葉を知らなかった君へ

 

 

自分が覚えている一番古い記憶は、動物園の猿でもなく、親が運転するシャリオの後部座席でもなく、庭の土のキラキラとアリだ。

(内容にそぐわない貫禄の西山 生後7ヶ月程度)

 

とにかく暇だった。近所に同世代の子供もいない。両親は夕方になるまで帰ってこないし、帰ってきても忙しそう。おもちゃが豊かなわけでもない。ひらがなとカタカナしか読めないし、テレビでみのもんたが何を話しているのか分からない。そこにいるのは、洗濯物を干すおばあちゃんと、たまに帰ってくるボサボサの猫と、アリの行列。アリだけがいつでも構ってくれた。庭の土は少しキラキラしていて、その上をアリが忙しなく歩いている。潰してみたり、誘拐してみたり、手のひらに乗せてみたり。

とにかく、暇であることが辛かった。なんで生きるんだろう。

小学生になる前の春、人が自分で死ぬことができることを知った。衝撃だった。病気か交通事故でしか死なないと思っていたから、この暇で暇で仕方のない日々を終わらせる方法があるなんて、と当時は感動した。

小学一年生の夏に、おばあちゃんにこっそり「自殺したい」と言ったことがある。おばあちゃんは酷くびっくりして、何も言わずに部屋を出て行った。何か傷つくことを言ってしまったのかもしれないと、当時子供ながらに反省したことを覚えている。そこから誰にも言わずにこっそり、死んでみたいと思い続けていた。これは恋だ。叶わない恋をし続けたのだ。

そんな拗らせた少女改め西山を好きになってくれる人なんていないと思っていた。でも変わり者もいるもので、人生で初めて彼氏ができた。これがまた自分にとっては奇妙な存在で、この人はなんの打算もなくそばにいてくれる。何か楽しいことをするときは必ずそばにいようとしてくる。ご飯を作ってくれて、私が酷い目に遭うと私よりも怒っている。

私は22歳にして初めて、彼との関係性のおかげで「寂しい」という気持ちを持った。正確に言うと、この気持ちはずっと昔から存在していて、これを寂しいと呼ぶのだと気づいた。

寂しさを動機に何かしてくる人が総じて大嫌いだった。甘えてるんじゃねえ、大人なんだからしっかりしろ。それは全て、あこがれだったのだ。寂しいと言える人へのあこがれ。

今でも希死念慮は脳内にギッチリへばりついているが、今はそれすら愛おしい。

おばあちゃんにしか言えなかった「死にたい」は「寂しい」だったのだ。テレビの話題についていけなかったのも、アリの群れを潰したのも、両親をはじめとする世界への寂しいと思う気持ちだったのだ。

今、もし3歳の私がいたら、場合によっては殺してあげるかもしれないけれど、それよりはもっと甘え上手の困らせ上手になれよと念を押したい。

親を困らせて、寂しいと泣いてやれ。

(途中エヴァのなんかしらのキャラのジェネリックになりかけてしまいました。失礼しました。)

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隣の畑にすごい発見が落ちてるかも。
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