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2018.07.02

【FEATURE 】数珠つなぎインタビュー#5
モリノタイキ(Transit My Youth)⇒藤井愛稀(俳優)

前回:【FEATURE】数珠つなぎインタビュー#4
井口聖也(Balloon at dawn)⇒モリノタイキ(Transit My Youth)


Interviewer:モリノタイキ(Transit My Youth)
Interviewee:藤井愛稀(俳優)

初夏の雨。Transit My Youthのフロントマン、モリノタイキと、”a vista”のMVにも出演する、俳優・藤井愛稀。音楽と演技というそれぞれの道を進む中、バックグラウンドにある感性がお互いに刺激する。見えないところでトライアルアンドエラーを繰り返し、表現という一つの舞台の上から新しい景色を目撃し始めた二人の物語。

自分の中にある感情を引き出していくこと

モリノタイキ(以下モリノ):
Baloon at dawn の井口君から数珠を繋がれまして。とりあえず、自己紹介をお願いできますか?

藤井愛稀(以下藤井):
普段は所謂インディーズ映画だったり、ローカルのTVCMや色々な企業さんのwebCMだったり、ミュージックビデオに出演しています。たまに映画を撮ることもあります。

モリノ:
たまたま、Balloon at dawnの”Girls around the gate”とTransit My Youthの” a vista”という曲のMVに両方出ていて。前回(対談)の井口も含めて全員繋がってるというね。

藤井:
不思議なご縁ですね。

モリノ:
MV撮る前に打ち合わせした時に、(Transitの)シンセのナカヤマが古い付き合いやからどんな感じの人なん?って聞いてたんやけど、なんやろ、おどけてはってコミカルな人やなと。

藤井:
ナカヤマとは古い付き合いで。

モリノ:
周りに俳優をしてる人がいないから、撮影の日に初めて見て。
正直舐めてるところがあったんですけど、俺が思っていたアマチュアの俳優のレベルを遥かに超えてきて。
こんなこと言ったら失礼ですけどびっくりしたのは覚えてますね。

藤井:
恐れ多い・・・ありがとうございます。

モリノ:
俳優とか演技をするきっかけになったことって何ですか。

藤井:
お芝居してる人って昔から映画が好きだったとか、役者さんに憧れてって人が多いんですけど私は幼少期からメディアとかに興味がなくて、本が好きな子供だったんです。音楽も全然聴いていないくて、父が聴くカシオペアなどのフュージョンや、母の聴く松田聖子などだけ聴いていたような記憶があります。

それで、たまたま「タイヨウのうた」っていうYUIさんが主演してはる映画を偶然見て。簡単に言えば音楽ってすごいって思って、そこから色んな曲を聴くようになって。兄がいるんですけど、ちょうどその頃兄からiPodをもらって。

モリノ:
じゃあ元々は音楽から入ったんや。

藤井:
そうですね、それでギターを少し弾き始めたりとか。知り合いが芸能養成所が大阪にあるから行ってみたら?ってオーディションを紹介してくれて、その頃は歌がしたくて受けてみたら、通ってしまったんです。

養成所ではお芝居とダンスと歌、全部しないとダメで。全然お芝居にはその頃興味がなくて、映画とかも、嘘というか作られたものみたいなイメージがあって。

スタニスラフスキーの演劇理論を学んだんですけど、演技っていうのは自分の中にある感情を引き出していくもの、っていうことを知って。

実際にやってみたら色々と感じるものがあって、人見知りで引っ込み思案で、人ともロクに喋れないみたいな子供だったんですけどだんだん改善されて舞台にも立てるようになったんです。

それだけで一個人生が面白くなる瞬間

モリノ:
人見知りっていうのはずっとそうだったん?

藤井:
母親のスカートの中から出てこないみたいな。テレパシーで会話してんのかって先生に言われるくらい、教室の隅からボソボソ話すような感じで。
基本、人と接するのが怖いというか、部屋の隅っこにいて本読んでるのが好きだったんです。
お兄ちゃんが勉強好きやったから、私も勉強好きみたいなフリして。小・中学生はそんな感じでした。

それで、私は兄の影響で幼少期から剣道してて。中学二年生になったら段を取れるんですけど、昇段試験を取るに当たって眼鏡をやめてコンタクトに変えたんです。
風貌がだいぶ変わったみたいで。髪の毛をそのときにバッサリ切って、たまたま。ちょうどその時に、知り合いからオーディションの話をもらって。

モリノ:
コンタクトのコマーシャルみたいやな。(笑)

藤井:
変わりすぎて、友達から「もしかして、いつき?」って言われましたもん。(笑)イメチェンじゃなくてたまたま、その週末に髪切ってメガネ外しただけなんですけど。

高校時代は新宿RUIDOとか、東京の小さいライブハウスでお芝居してたりしてたんですけど、あなたのお芝居みて泣いちゃったわって突然言ってくださった人がいて、自分が映画見て泣いたりした感動を自分も与えることができるんだってその時思って。

モリノ:
生きていく価値を見つけたというか。大げさにいうと。
自分に才能があるかどうかって、自分に言い聞かせてるだけで根拠はなくて、誰もが褒めてくれるとは限らないけど。
周りの一人が褒めてくれて、また曲書いて、それが二人とかに増えていって、みたいな。
自分の中で活躍できるかもしれないみたいな可能性?演劇とかやる人とかも含めてきっかけはそこなのかもね。

藤井:
自分の中で確信的なものがないと続けるのは難しかったりするし。
言われたことで、やってていいんだって思えましたね。

モリノ:
それだけで一個人生が面白くなる瞬間ってあるもんね。ターニングポイントというか。
その人のその一言がなかったらやってなかったかもしれないし。

藤井:
自己満足で終わってたかもしれない。

モリノ:
その先に何か目指しているところはあるの?

藤井:
んー。これで生きていくというかこれが職業という、そんな大それたものではないけど、これがないと苦しくなるというか。

モリノ:
ご飯食べるみたいな感じなんかな。栄養的な。

藤井:
そうかもしれないです。人って生きていく上で色んなこと考えるじゃないですか。
私の場合、日常生活でそれを出すことが苦手というか。

モリノ:
モヤモヤしたままいてしまうってことかな。

藤井:
自分の言葉で出していくことが苦手というか。
そもそも自分に自信がなくてというのがあるのかもしれないですけど。
演技の場合は私じゃなくて演出とか監督がいて、私だけじゃない。

モリノ:
ひとパーツかましてるというか。

藤井:
そう、ひとパーツ。作品としての私を見せることができるって感じです。

Transit My Youth ”a vista”と藤井愛稀

モリノ:
偉そうに言ってしまうけど、笑った顔が素敵な人、怒った顔が素敵な人とか色々いる中で
“a vista”の藤井さんは、すごく悲しい顔をするよねって印象やった。
カメラ回ってる間のイメージやけど。ほんまに悲しいとき、人ってこういう顔するなっていう。
演技してるっていうより憑依してるというか。

藤井:
この曲はこういう曲だっていうテーマを撮影する前に教えていただいて。
曲を聞いた時の自分なりの印象と合わせて、なるほどって合点する部分があって、その上で顔ができたのかも。
ラブソングかもしれませんけどラブソングじゃないじゃないですか。あれ。

モリノ:
うん、あの当時、一年三ヶ月前くらい前?
前にやってたバンドをやめたところで、なんかもういいかなって。
この先これをやってて、人を納得させるだけの成績というか、見え方?残せる気がしなかったし、自分が何をしたいかも漠然としてしまってて。

でも、音楽で何かを成し遂げることも幸せかもしれないけど、音楽をやってること自体が俺の中で「勝った」というか。
そんなことを思ってた時に作った曲で。

「I Love Youを忘れたのになぜ記憶に君はいるの」って歌詞の、「君」は「音楽」のことで。
音楽というカルチャーに没頭する俺のことで。

仮にTransitをやらずにあそこで終わっていたら、自分の中でやっていたことをいい加減に終わらしてしまうような。
そんな曲だって話をあの時、してたよな。

藤井:
「a vista」でも意識したことで、映画でも音楽でも、出てる言葉をそのまま素直に受け取られることもありますけど
でもそれだけじゃないってことを、何かしら感じてもらえたらって思う作品、あるじゃないですか。

私の撮った映画もそうなんですけど。
それは「言わなかったら伝わらない」のも承知の上ではありますけど、それでも何かを感じ取ってもらえたらという。

モリノ:
MVも設定とかはこしらえてたけど、(藤井さんが)汲み取ってやってくれて。
当時の俺の思ってたのはこういうことやっていう顔をしてはった。(笑)
役者、ミュージシャン、っていう壁を超えて一緒にやれてよかった、と思ったのは覚えてる。

藤井:
スポーツじゃないから、百点とかってないじゃないですか。
表現するものやから絶対的な正解っていうのが分からなくて。
自分としては汲み取ってこうやろうって思ってた部分があったから、そうやって伝わってて良かったです。

モリノ:
初めての監督作品はどうでしたか。
Transit My Youthのghostって曲を使っていただいて。
自分なりにもMVのイメージを持ってたから、藤井さんなりのイメージはどう違うんやろって想いがあった。

藤井:
「朝が来るまでおやすみなさい」というタイトルの映画なんですけど。
自分の感情って自分ではよくわかっていると思いきや、なかなかちゃんと向き合ってることとかってないなって思っていて。

主人公は何気ない大学生活を送っている男子なんですけど、不思議な女性と出会って、自分の内面と向き合い出す話で。
脚本は私じゃなくてまた別の人なんですけど、解釈はこちらでしていいということで。

分かりにくい映画ではあると思う。
映画は映画として、物語としてあるんですけど、Transitの曲はそれを補完してくれるものとしてぴったり合うなあと。
たまたま携帯でシャッフルしてて聞いてて、ん?って引っかかるものがあって、何度か聞いていくうちにこれはすごく合うんじゃないかと思って。
書き下ろしではないですけど、快くご協力いただいてありがとうございました。

モリノ:
いえいえ、曲が喜んでると思います。(笑)
俺の(曲の)イメージは頭掻きむしってるみたいなイメージやったけど、合ってたね。
リズム感が似てるなと思って。

藤井:
あ、そうなんですよね。映画は淡々と進んでいって。
ライブに遊びに行った時に手に入れた音源をたまたま携帯に入れてて良かったです。
思ったことを全部書く、っていうタイプの音楽じゃなくて紡ぎだし方、表現方法が自分と近しいものを感じたというか。

モリノ:
分かりやすい方が人には届きやすいけどね。

藤井:
映画もそうです。起承転結があって落ちがあってみたいな。

モリノ:
そういうのに反抗していきたいというのはあるなあ。

藤井:
一から百まで言わなくても伝わるものはある、っていうのを信じてしまっているし、もし違う解釈になっても面白いなって思うから。
百人が聞いたら百人が泣く曲とか、そういうのではないものが個人的には好きなんですよね。

モリノ:
もしかしたらTransitの中の曲の一人称の「僕」っていうのと、藤井さんが演じているキャラクターには近しい存在が多いのかもしれない。
出てる作品はコメディが多いよね。
あの映画の中での藤井さんの表情と「a vista」の表情って全然違くて印象的。

人の本質って何かを知りたい

モリノ:
狭き道を突き進んでく人が減ってくじゃないですか。結婚したり、就職してやめちゃったりとか。
自分が哀れになってくこともあって、自己満になってないかなとか、現実逃避のためにやってんじゃないのか、とか。

藤井:
それでも出来上がった作品を見てくださる人がいてっていうのを思うと、
自分が作ったというだけじゃなくて、それが届くところ、向こうがあるから。そこを信じてやっています。

モリノ:
自分じゃないといけない仕事ってそんなにないと思ってて。
お前にしかできないプロジェクト、みたいな仕事のイメージがなかなか浮かばないし。(笑)

藤井:
代わりがいるようなことはしたくないなと思います。
お芝居やってる同年代の方でも自分みたいなビジュアルとかいっぱいいるし、どう自分であることに価値をつけられるか、っていうのは考えてる。

モリノ:
日常的に生活してる時にアンテナが立つことってあるの?
こういう人、面白いなとか。こういう顔してる人面白いなとか。

藤井:
芸術家気取るわけではないけど、普段からそうかもしれません。

モリノ:
スイッチがオンのままというか。

藤井:
今でも、こういう話をしてる時の仕草とか、頭かくとか。

モリノ:
俺が落ち着きないだけや。(笑)

藤井:
(笑)
映画の世界って何か一つ一つの動作でも意味をつけるんです。
例えば足を組む時にしても、こっちに人がいたら、どちらの足を組むとか。

モリノ:
音楽だと、一から作詞作曲して、ジャケットも自分で考えて、とかできるけど、
映画や演劇だとセリフ自分で考えるわけじゃないし、照明さんがいて演出の方がいて連携、連携、みたいな。
誰かが怠るとクオリティが下がるし、俺は絶対イライラしちゃうなって感じやけど。(笑)

藤井:
でも、バンドもそうじゃないですか。近しいとは思いますけど、私としては。
演技していて面白いなと思っているのは、自分の感情を引き出すっていうのもそうですけど、
ませた子供ですけど人って何やろっていう答えのない哲学みたいなことを考えてて、それを見たくて続けてるっていうのはあるかも。

モリノ:
野望とか聞こうと思ってたんですけど、そういう次元じゃないのかなって。
何というか入り込んでるんやろうなと。

藤井:
テレビに出て映画に出て有名になりたいって周りの人は多いんですけど、
さっきも言ったように人の本質って何かを知りたいっていうのがモチベーションになってて。
甘っちょろいこと言ってんじゃねえ、って怒られそうですけど。
結果として誰かの心に寄り添えるものができたらいいなっていう感じです。

モリノ:
僕らもしっぽりレコーディングしてるし、東京、大阪とライブ行きますので。
またよろしくお願いします。

■Text: So Ohashi
■Photo: タツミヒカル

■藤井愛稀
▷Information

■映画『ファミリー☆ウォーズ』
キングレコード主催「第5回 夏のホラー秘宝まつり 2018」出品作品
監督・脚本:阪元裕吾
上映日:2018/8/25〜
上映劇場 : キネカ大森(東京)シネマスコーレ(名古屋)十三シアターセブン(大阪)

『ホラー秘宝まつり』公式サイト:http://horror-hiho.com/
『ホラー秘宝まつり』公式twitter:https://twitter.com/horror_hiho

■映画『血を吸う粘土2』
2017年トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門正式招待作品『血を吸う粘土』続編
監督:梅沢壮一
上映日:2019年公開予定
『血を吸う粘土』:http://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKIXF-559

■Transit My Youth

▷Release
Transit My Youth / FAN CLUB
発売日 : 2017年12月22日(木) 
価格 : 1,000円(税込)
収録曲:
1. Pray Station
2. garam
3. a vista
4. help
5. sugar life
6. uchuu
7. hipopo

▷Live
6/30(土)大阪 地下一階
7/8(日)大阪 梅田5会場 ”夏福”
7/9(月)大阪 南堀江knave
7/15(日)大阪 梅田HARDRAIN
7/23(月)大阪 心斎橋Pangea
8/24(金)東京 下北沢THREE
9/22(土)山口 周南RISE