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2018.04.28

【TENANT 101】心の洗濯機 #9

 

かなり本当に恥ずかしい話、この前仕事を終えて家に帰ったら電気が点かなかった。
ガスも止まってた。公共料金の払い忘れだ。
人間として良くなくて反省するのだけれど、忙しさにかまけてたまにこういうことが発生する。
コンクリートに跳ね返ったストレスを浴びて口は渇ききり、身体は疲れていた。
とりあえずペットボトルに入ってた水を飲んだ。
ぐっと深呼吸をした。

コンタクトレンズをしているけれど、それでもあんまり目は良くない。
それなのに、暗闇の中で視界が冴えるような気がした。
普段見えないものが見える気がした。感度がやけに上がる。世の中には見えてないものがたくさんあったことを知った。

とりあえず家のカーテンというカーテンを全部開けて、街灯や月の光を取り込んだ。

わずかにだけ、白い。

お湯が出ないから、意を決して冷水のシャワーを浴びる。
実はこういう滝行みたいな小さな覚悟が好きでもあった。

ものすごく冷たいのだけれど、触れる瞬間だけ乗り越えれば、感覚が麻痺してくる。タオルで水分を拭き取った後は、いつもより感覚が冴えてる。

もう結構遅い時間なのに、時間の概念をあまり感じなかった。
ちょっとだけ白が混じったほとんど真っ暗でしかない。
それでも見えるものは見える。

 

普段は家に帰ってからも色々と深夜まで作業があるのだけれど、溜まってるタスクも今日はいい。ノートパソコンに蓄えられた電気だけ、生きていた。

明日考えよう。早く寝て、朝になったらコンビニに払込に行こう。

 

 

たまに学生の時に一人で行った香港の街を思い出す。

まだ明けない高速道路を、2階建ての夜行バスの一番前の席に深く座り込んで、イヤホンを耳の奥に突っ込んで見ていた窓の向こう、流れる異国の街のこと。

あの時はゼロになりたかった。当たり前にある暮らしや、続いていく昨日と今日と明日の連続性の中で忘れてしまいやすい、ただ生身の人間であるということそのもの。

電車に乗って乗り込む戦地もあるかもしれない。気を遣う会話もあるかもしれない。作り込まれた音楽があるかもしれない。スパイスの絶妙な調合によって、スープが美味しいかもしれない。

 

別に何したっていいんだろうと思う。本当に思う。考えすぎんなよな、って思う。だけど元気でいてほしい。

 

バック・トゥ・ザ・ベーシック。ここには寝床がある。