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2019.05.11

【TENANT 101】心の洗濯機 #15

「はじまりのうた (Begin Again)」

1

いろんなフレッシュが入り混ざってはドアを叩く春が終わる頃、気温が上がって半袖でも出かけられるようになった。
時の流れをぼんやりと感じてる。

連休が終わっていつもの生活、とも呼べるものが帰ってきた。
忙しかったり心に余裕がないと「その瞬間に向き合う」ことがなくなり、たまにふと目を合わせてみると周りの人間関係とかもずいぶん変わったなあ、みんな着々と進んでいるなあって気付かされた。
令和婚も多かったしね。

今の自分の生活の部分は、長く音楽をやってきたことでできた人間関係や環境によって形成されているけれど、当たり前のようにやってきた音楽に対して一度向き合ってみる時期なのかもしれないと思っている。

というのも僕は惰性に負けやすい。アートって根性のいるものだ。
特に別で仕事をしている傍ら、僕は自分自身の右足、左足が、どんな地面を踏みしめていくのかを、どこに向かって進むのかを、なぜ進み続けるのかを、心の底から理解しないといけない。
強い意志を持っていく、パラレル・ワールドはないのだから。人生一度。

 

2

そんなことを沸々と考えていたゴールデンウィーク中に大好きな映画の「はじまりのうた(Begin Again)」を観返した。
ジョン・カーニー監督作品は音楽の初期衝動や、制作過程の描き方がとても丁寧で心が洗われる。
中でも「はじまりのうた」の展開にはいくつかの軸があり、それぞれのドラマがぐっとくる。

 

 

デイブとグレタ。
二人はインディーシーンで気が合って恋人になるも、デイブがメジャーレーベルに呼ばれる。
少しのボタンのかけ違いで破局して、気づけばだっさいアレンジのメジャー志向の歌を歌うデイブ。
彼の携帯の留守電にグレタはピアノとギターだけで録音した曲を吹き込む。逃げ込んだ友達の家からひっそりと。
好きだったことをそこに残して、もがく日々に区切りをつけるように、またそこから始まるために。

 

 

グレタとダン。
有名プロデューサーから転落し、自殺寸前のダンがグレタの弾き語りをバーで目撃し、歌に救われる。
いい音楽を一から作りたいという気持ちがダンをまた生かし、デイブとの破局に傷心するグレタもまた生かされる。
最高のアルバムを作るも、バンドキャンプで100円で売り飛ばして大ヒットする。

 

 

ダンと家族。
離婚してから妻と暮らす娘にはたまにしか会えなかったダンが、グレタと生き生きして音楽を作る姿を見て、道を踏み外しかけた娘はギターを弾き出す。
ダンが初めて子育てにおいて重要な役割を果たし、妻とやり直すきっかけを与えられる。

 

 

 

3

才能によって売れていくこと。売れていくことによって失われるもの。売れないことによって守られるもの。
そんなテーマは世に溢れているけれど、この映画は創作することの美しさをただ純粋に描いていると思う。

人は何歳になっても前に進むことが必要で、前に進むためには始まりと終わりを通過していく。嫌でも。
そういった生活の物語からくる、イデオロギー(動機)を失った音楽は響かない。

言いたいことがなくなったら終わりだな、と感じた。
自分にとって言いたいことって何かな。
怖がらずに生活の物語のページをめくれているか。

映画のように時が来たら終わりが来るわけではなく、アーティストは今日も創り、食っていくために動き続ける。

 

 

 

 

 

 

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