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2017.08.14

【TENANT 102】#3 喫茶 つぐみの部屋

こんばんは。つぐみです。
 
最近、私の部屋なかなか開けられず
お友だちと会う機会も少し減ってしまってました。
 
普段は大阪で暮らしてるのですが
この数週間はわけあって地元の長崎で過ごしていました。
その間、デザインのお仕事は実家の方で
在宅でさせてもらっています。
撮影やカフェといった現場の仕事は
わがまま聞いていただき、すべてストップ。
今在るこの時間をこの場所で刻むための滞在でした。
 
それは旅に近かったかもしれない。
家から出ることはほとんど無かったけれど
現実と空想の間で
いま抱えている想いを伝えるための言葉を
ずっと探し選び続ける日々。
 
それにしても私はあまりに言葉を知らなすぎるので
物語を読もうと思い立ち、手に取った本があります。
 
 
 
今回紹介するのはこちらの3冊。
よしもとばななさんの作品です。
 
 
 
 
 
 
 
まずは『ハネムーン』。
余談ですが・・・1か月ほど前から
25歳にして手足口病を発症してしまい笑
皮膚科通いしてたのですが
その帰り道に立ち寄った古本屋で目につきました。
 
 
 
 
 
 
 
 
ただ単純に『ハネムーン』という
タイトルが素敵と思って。
身軽で潔白で澄んだ空気を纏ったような音。
その意味からしても
日常から離れた幸せなひとときを想像します。
 
物語の主人公は
10代の頃から当たり前のように共に過ごしていた
ふたりの男女。18歳で結婚し、旅立つ。
 
身近な人の死や宗教的背景がありながら
それらをすっと受け止め、交錯する想いを丁寧に束ねる。
 
ふたりを取り巻く周囲のおとなたちが
ふたりを理解してくれる温かさや
受け止めてくれる強さとやさしさが
じわりと心に染み入ってきます。
 
自分の世界は決して広くなくても大丈夫。
たったひとりの大切な人と
同じ空気のなかで呼吸ができれば
それだけで旅に出られる。
 
そんなふたりの日々を
尊く愛しく羨ましく想いました。
「世界が私たちに恋をした。」
というキャッチコピーも惹かれるものがあります。
 
 
 
 
『ハネムーン』を読み終わる頃に
ばななさん好きの友人がいちばん好きだと教えてくれて
翌朝すぐに本屋に出向き手に取ったのは
『みずうみ』という作品。
 
 
 
 
 
 
 
 
これを教えてくれた友人は
フォトグラファーです。
彼が撮るもの、見えている世界は
私にはなかなか捉えられないもので
敵わんな〜とぐったりする反面
私が知らない世界を見せてくれるのでうれしい。
という唯一無二のとてもありがたい存在です。
 
自分が好きな写真を撮るひとの
好きな小説を知ることは
良い意味で自分の中の何かを
ひっくり返される気がして
どぎまぎしながら読みました。
 
 
物語の主人公は
向かい近所に住むふたりの男女。
窓ごしに会話を交わすだけの関係から
次第に片方の部屋で暮らすようになります。
 
その変化はあまりに静かで無抵抗で
物事は進むように進む、流れるように流れる
最も気持ちいい人生の在り方だなあと感じるわけですが
 
特に私が良いなあと思った言葉があります。
 
「お互いの動向をそんなふうに
自然に気にしていること自体が、
窓の開く音をさりげなく聞き分けている耳の感度が、
もう恋のはじまりだったということさえ、
気づかなかった。」
 
「ほんとうに人を好きになるということが、
今、はじまろうとしていた。」
 
「このあいだここをふたりで歩いたときは、
みずうみがもっときらきらと輝いて美しく見えた。
私はすでに恋していたのだ。きっと。」
 
主人公の女の子の気持ちの変化を
表現しているところ。
自分も抱いたことがあるしこれから抱くことがあろう
簡単に触れられたくない
宝石のように大切に大切に自分だけのものとして
とっておきたい想いの変化を、
代弁してくれていると思いました。
 
ばななさんの物語は
主人公の近親者の死が
背景としてあることが多いですが
だからこそそんなひとりの人への気持ちの煌めきが
重厚感と聡明感をもって押し寄せてきます。
 
 
 
そして、
手足口病によるブツブツも
薬のおかげで治りかけたころ、
次に手に取ったのは言わずと知れた代表作の『キッチン』。
 
 
 
 
 
 
 
 
ばななさん好きなのに読んだことなかったので
いよいよ今だ〜と思って
『みずうみ』を読み終えた翌朝、
本屋に買いにゆきました。
 
これもいわゆる”流れ”のようなもので
私が信じてることのひとつで、
出逢うものには出逢うべきときに自然と出逢う
ということだと思います。
 
好きな一文は、
「闇の中、切り立った崖っぷちをじりじり歩き、
国道に出てほっと息をつく。
もうたくさんだと思いながら
見上げる月明かりの、
心にしみ入るような美しさを、私は知っている。」
 
逃げたくて仕方なくて
考えてもこたえはわからなくて
誰も知らなくて教えてくれなくて
途方にくれるけれど
側に居る誰かと丁寧に
時を刻めたら言葉を交わせたら
心を渡し合えれば、
とりあえずそこから進んでみようと
素直にそう思えました。
 
他にも何度も何度も読み返したくなることばが
本当にたくさんあり、
ひとつひとつのことばを読みこんでいる時間は
私にとって宝物のようなひとときでした。
 
 
 
そして
ばななさんの物語に登場する
主人公の女の子たちの名前。とても好きです。
 
ハネムーンは、”まなか”。
みずうみは、”ちひろ”。
キッチンは、”みかげ”。
 
そしてばななさんの代表作のひとつに『TUGUMI』という物語がありますが
私の名前はこれが由来しています。笑
ほんまかいな、ってかんじかもだけど
もしかして?と思って母に尋ねたらほんまでした。笑
ばななさんの物語の世界に住んでいるような気分になれてうれしいです。
気分だけでもうれしいです。
”つぐみ”というこの名前をもらえて私はうれしいです。
 
 
実家で家族とともに過ごしたこの数週間の
このタイミングでこれらの作品に触れられた時間は
これから生きて行く日々の中で
忘れられない時間となりました。
 
自分の日々と、作品とが織り重なり
ひとつの思い出として生まれ変わることは
貴重な体験です。
 
またこうして、様々な作品と出会うたびに
日々を彩っていけたらと思います。
 
とても長くなってしまいましたが
読んでいただきありがとうございました。
 
大阪に戻ったら
リアルつぐみの部屋開けます〜
遊びに来てください。
 
2017.8.14