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2017.04.11

【TENANT 202】#2 惑星の感触

『ひらがなの柔らかさ』

 

「おおっ!ああっ!ううっ さわりたい」

 

「ぬあっ!むおっ!ぐぬぬ さわりてえ」

 

「むむむ!ののの!ななな!さわりたし」

 

「ええ!? はあ!? なに!?

さわっていいの!?」

「てか、触れるもんでもないじゃん!?」

 

“ひらがなの柔らかさ”を、

子供たちはよく知っている。

 

一方、大人たちは、

凝り固まった脳みその奥の方で、

からまり合った漢字やアルファベットを解きほぐしては、岩壁やアスファルトのような言葉をならべて、

ああでもない、こうでもない、

と、頭をかしげている。

 

「皇后両陛下タイ・ベトナム御訪問」

「人身事故の北陸新幹線、上下線で運転再開」「長野防災ヘリ墜落」「イラン、ロシア製対空ミサイル”S300″の発射実験に成功」

 

新聞紙は毎朝、眠たい眼をこすりながら何千何万もの文字を身体にまとって、眼鏡をかけた険しい顔つきのサラリーマンや、腑抜けた顔であくびをしている専業主婦たちとにらめっこをしているのだけれど、

 

「なになに?」「え!?」「うーん」「ふぁああ〜」「はぁ…」「ふむふむ」「ほお〜」「へえ〜」「はっくしょい!!!」

 

その後は食器やグラスに押しつめられたり、嫌われ者の虫たちを撃退するための武器になったり、最後はだいたい輪廻転成。

 

 

以前、新聞とそれを読むお爺さんの会話を小耳にはさんだことがある、

 

新聞紙「ああ、あなたにめくられる時のその指の感触、スピード、眼差し、たまらないわ♡」

 

お爺さん「孫は今ではスマートフォンでニュースや本を読むと言うのじゃが、どうもあのタッチパネルというものが苦手でなぁ。わしゃ紙が好きなんじゃ。神などわしゃ信じとらんし、髪ももうありゃしないがな。おっほっほ〜」