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2019.05.19

【TENANT 206】ひとりカラオケボックス #7

#7 思い出せばやさしい

しばらく泣いていない。
何がそんなに悲しかったのか思い出せないくらい1、2年前は泣いていたような気がする。

昨年末から、小さい頃から一緒に育ってきた犬の具合が悪くて、3月に無理矢理、数時間だけでも会いに実家に帰った。
そのとき出し尽くしちゃったと思うくらい泣いて泣いて、ふとそのときを思い出すと涙が出そうなときもすっと引いていく。

一生で心臓の拍数は決まっているなんて話があるけど(そうしたらスポーツ選手はきっとみんな早死になので、嘘だろう)涙の量も決まっていたりするのだろうか。

寺山修司の「海水と涙の比較研究」には、かさの話があった。

にんげんが愛しあうようになってから流した涙全部と、
地球ができてからそこに貯えられてきた海水と
どちらの量が多いか?

ー寺山修司「海水と涙の比較研究」一部抜粋

悲しくて悲しくてどうしようもなくて流す涙全部と、
人を欺くように出てくる涙と、
自分のために泣く涙と、
どれがもっとも多いだろうか?

悲しくて悲しくてどうしようもなくて流す涙の量は、
もしかしたら一生にこれくらいだけって決まっているかもしれない。
やり場なくて、誰のせいでもなくて、ただ悲しいっていうのは、
それはもしかしたら贈り物のように大切な時間だったりするんじゃないか。

ルルに会いに行った日は自分でもよく分からないくらいよく泣いた。
でも自分のためじゃないあんな涙はいままであんなに流したことがなくて、
悲しくて悲しくて、でもこの時間をくれてありがとうと思った。

これまでもきっと誰かがしたように涙でなぞるからからの鼻

さんさんと春の光を受けながらあなたはわたしたちの天使