• HOME >
  • TENANT >
  • 【TENANT 301】お手本みたいなくしゃみやね #1
2019.06.02

【TENANT 301】お手本みたいなくしゃみやね #1

慢性的な鼻炎を抱えている。軽度ではあるが。

花粉の季節は過ぎ去った今でもポケットティッシュは手放せない。

“God bless you”とはよく言ったもので、
鼻炎がひどい時にはご加護でも何でも授けてほしいと思ってしまう。

この間サポートしているCoughsというバンドでスタジオに入った時のことだ。

「お手本みたいやね」
と言ったのはボーカルの横尾くんだった。

私はその言葉になんだか照れてしまい、鼻水を拭くのも忘れてドゥフフといったような笑顔を浮かべていたように思う。大層気持ち悪かったことだろう。

それにしても「お手本」などと言われると煩わしいだけだった鼻炎持ちも悪い気はしない。サンプリングしたらいい感じに使えるかもしれない。

自分も友人の何かを面白く例えられるようなユーモアを持っていたいな、と思う。
煩わしさを忘れてしまえるくらいのものを。

最近は柴田聡子さんのアルバム「がんばれ!メロディー」をよく聴いている。
歌が素晴らしいのは言うまでもないがドラム的な観点でも楽しめる部分が多い。
叩いているのはトクマルシューゴさんのサポートでも活躍しているイトケンさん。

全体的にフレーズ自体はシンプルなのだが音色やアーティキュレーション、録り方、グルーヴによって彩り豊かなリズムセクションが組まれていて、オケだけでも十分聴きごたえのあるつくりになっている。

特にシンバルによるダイナミクスのつけ方が本当に素晴らしく、
「ライドシンバルってこんなにも曲の情感に寄り添って色々な音を出せるんだな……」と思わずため息が出る。

芳醇かつ華やかな響きを持ったまま、鳴るところはしっかり鳴っているのにうるさくない。

同じ機材があったとして自分はここまでいい演奏ができるだろうか、と身が引き締まる思い。

昨秋あたりから色々なバンドやユニットのサポートで演奏するようになった。曲の要請にできる限り応えようと試行錯誤しているうちに機材も増え、演奏についてより深く考えるようになった。

極論「気持ちのいいグルーヴを出して」「キープする」ことができればいいのだがやればやるほどその難しさを痛感する。

幸いなことに刺激には事欠かないので周りの力も借りながらより良い演奏を目指して頑張っていきたい。

昨年末の年間ベスト企画でそうさんに呼んでもらった縁もあり、
この度SALONのメンバーにも寄せてもらえることになった。

こういう場をもらえるのは本当にありがたいことだ。
書くことはいくらでもあると思っていたがいざ筆を取るとこれが進まない。
どうにか脱稿にこぎつけたが何も大したことは書けなかった。

話すことは多いけど
ただ くしゃみをひとつ
とは細野晴臣。

どれだけ言葉を尽くすよりくしゃみ一つの方が伝わることもあるかもしれない。
(たぶんこの解釈は間違っているけど……)

続けていくうちに何か読み手に伝わるものが書けるようになる、と信じたい。


田井中芳樹
Twitter
Instagram