2018.05.15

【TENANT 406】Dog Days #3

サラサラとした風とムワッとした雰囲気が入り乱れる5月。

あれほどまでにぶくぶくと着込んでいた服も、
今となってはタンスの奥に閉じ込められ、
薄手のシャツだけで過ごせる季節に差し掛かってきた。

人々が手に持つ、湯気立つコーヒーは、
いつの間にか冷たいコーヒーに変化を遂げた最近だ。
ちなみにアイスコーヒーは「冷コー」と、昔は言っていたらしい。
「冷たいコーヒー」で「冷コー」。

「今の時代はなんでも略しすぎる」なんて
上の世代に言われて育った僕らだけど、
なんのことはない。
「昔から略すんじゃないか」と考えた。

昭和の時代には「レモンスカッシュ」も「レスカ」だったらしい。
今では絶滅した単語だ。が、そんな言葉を感じられて、僕は好きだ。

そう。僕は昭和が好きだ。

昭和に生きたわけでもないが、
あの独自の、なんとも言えぬ、空気感は、
少なくとも平成の最初、つまり僕らが小学校くらいまではあった気がする。

「思い出の中の世界なので、当然美化するだろう」と言われるかもしれない。
でも、確かに今と違う空気があったと思う。

僕らが生まれて、ゲーム機が、携帯が、ネットが、様々なものがめまぐるしく進化した。
便利と引き換えに、あの空気は失われたような気がする。

今じゃ待ち合わせは携帯で決められるし、連絡は毎日ラインだ。
困ったら図書館に行かなくてもネットで調べられるし、
パソコンで動画だって見れる。

僕が小学校の時はまだ携帯がなかったので電話で連絡をしていた。
ガチャッと電子音が響くと、大抵出るのは相手の母親だ。
それは小さな僕ら、でも確実に成長し、
社会性を少なからず身につけ始めた頃の
小学校高学年の僕らにとって、
何か「友人の母親」というものは気恥ずかしいものであり、
うまく喋れなかったような気がする。

今の時代ももちろん好きだ。

だけど、今一度、あの、少し不便な時代に戻ってみたいな、
なんて通勤途中に考えているのであった。